No.466 / The Beatles Live In Japan 1966 体験記


Web上のビートルズの大先輩バタさんがご自身の武道館ライヴの体験記を Outsider Records! のブログに掲載しても良いと言って戴きましたのでお言葉に甘えて.......
バタさんありがとうございますっ!


では早速掲載させて戴きます。



僕は中学3年生の時、彼らと武道館で出会いました・・・・・


抽選で2枚、更に米軍に勤めてる親戚からも2枚チケットが手に入ってしまい、友達3人に分け与え、みんなで行った。
もちろん学校には内緒で。ばれたら停学。
でもばれた!行けなかったやつがチクッた。
もはや完璧な不良少年だ(笑)



バタさんの当日本物のチケットです!家宝ですねっ!


当日は台風が行った後なので晴れていた。武道館なんて行った事もなかったけれど何とかたどり着いた。武道館も数年前にできたばかりでとても綺麗な建物だった。
ああ、ビートルズとは結びつかないな、と思った。
ものすご〜く期待に胸を膨らませながら、というよりも、これから同じ空気をすうんだ、と思うと、足が震えた。

入場し、席に着き、あたりはこれから起きる歴史的な出来事の前触れなのか異様な空気が流れていた。
しばらくすると、やや暗転、前座だ。この時点で、「キャ〜!」だ。半数以上の人がビートルズが出てきたと勘違いしたらしい。
「ウエルカム・ビートルズ」という曲を日本のグループサウンズが演奏した。おなじみドリフも出てきた。ここはちょっと笑えた。客席のみんなも笑っている。
でも、早く帰れよ!っていう心境。

照明が落ち、いよいよ、司会のE.H.エリックがビートルズを紹介!



ステージに彼らが上がってきた。
・・・!!見たこともないきれいな服着てるぞ!
ギターもいつもと違うぞ!
ジョン・ジョージ・リンゴの髪の色がすごく明るい茶色だ。ポールはけっこう黒い。くだらない感想かもしれないけど、これが最初に思ったことだった。

写真じゃないんだぞ。今見てるのは本物だ。動いてるけど、映画じゃないんだぞ。本物だ。

まわりは悲鳴というか断末魔の叫びというかものすごい。
みんな腰がぬけてる。立つ人なんかいない。

アンプにコードを差込み、儀式のように、軽くチューニングだ。

席はすごくよかった。2階の正面左寄り・前から3番目。当然アリーナ席はなく、そこには警官隊がいるだけ。

近い!彼らが手にとるように見える。ジョンの指先まで見えるぞ。
最初の曲は?「TWIST&SHOUT」か?いつもコンサートでは必ず最初にやる曲だ。去年のアメリカ公演でもやった。・・・ん?
ジョンがいきなりE7弾いた!「ROCK’N ROLL MUSICK」だぞ〜。ええ?意外だ!
そんなことを一瞬考えたが、もう完全にビートルズの世界に引きずり込まれて、ジョンの声が、ジョージのギターが、ポールのベースが、リンゴのドラムが、一気に耳に流れ込んで、カーッと血が頭にもぼり、頭が破裂しそうだ。



すごい!本物だ!・・あのギターは何だ?セミアコ?いい音だ。
すごいグルーヴ(そんな言葉は当時知らなかったが)だ。
音の波が押し寄せる。その波に自然に乗ってしまう。誰にもまねできない。

上手いとか下手とかを論じてはいけない、とこのとき決心した。

あっという間に1曲目終了。次は何だ。何がくる?ドキドキ。

いい忘れたが、すごく派手なスーツを着ていてびっくりした。かっこいい。日本のグループサウンズとは雲泥の差だ(当たり前か)。

2曲目が始まった。やはりジョンのコードをカッティングからだ・・・!
「SHE’S A WOMAN」だ!
渋い!好きな曲だけど、特にヒットしたわけじゃないし、なぜ?
数々のヒット曲はこの後にやるのか?
ピアノの部分をジョージがギターで演奏している。なるほど、勉強になった。自分のバンドでもこれなら出来るかもしれない。
意外とジョージがのっている。
リンゴが怖い顔している。
ジョンはダラーっとした感じで、いい感じ。
ポールはすごく張り切ってる。パワー溢れるって感じだ。

あっという間に2曲が終わった。

興奮、興奮!
次は? 
ヒット曲がくる?
「I WANT TO HOLD・・・」か、「SHE LOVES YOU」か。

えー!ジョージがリッケンバッカーの12弦に持ち替えたぞ!しかも、赤くて角が丸い見たこともないやつだ。すごくかっこいい。一目見てあのギターを欲しいと思った。

何の曲やるの?12弦てことは・・・?
ポールが何かしゃべってるぞ。え?聞こえない。キャーッってうるさくて聞こえない。
「ジョージ・・・・サムワン!」って言ったのか?

と思ってるうちに、ジョージがイントロを弾き始めた。
「IF I NEEDED SOMEONE」だ。ラバー・ソウルに入ってるやつだ。最新曲ってほどじゃないけど、新しいぞ。でも、これもヒット曲じゃない。最後のほうにまとめてやるのかな?

なんだ、なんだ、カポタストしてるぞ。なんフレット目かわからん。
12弦はきれいな音だ。歌はどうだ?
なんかだらしなく歌ってるけど、ジョージってかわいらしさ満載だ。手の振り方がかわいい。
だから歌はどうだ?バックコーラス・・・「AH・・・AH・・・」 うん、レコードっぽい。かっこいい。

え?ジャーンってもう終わった。こんな短い曲だっけ?
もっと聴きたい。



引き続き12弦でやるのかと思いきや、またセミアコにもちかえた。あのギターは何だろう。グレッチじゃないとは思うんだけど・・・・

ジョンが何か言ってる。やっぱり聞こえない。なに?なに?

なんだか、ジョンはふざけっちゃってはっきりしゃべってないみたいだ。でも、なんか「・・・デイ・トリッパー」って聞こえたような・・・

いきなりジョージのイントロ!このイントロはかっこいい。(いまだに好きだ)
「DAY TRIPPER」だ!これも新しい。最近のシングル盤からの曲だ。
もう、古い曲はやんないのか?日本でヒットした曲はやんないのか?いやいや、まだ、4曲目、これからこれから。

ジョンのサイドギターと切なくもありドスの効いたボーカル!魅了されちゃう。ポールの確実なベース。ジョージのリズム感のよさ。
そして何よりも、リンゴがすごい。レコードよりすごい。迫力満点!怖い顔してやってるのは真剣だからかな。

途中のB7のリフはジョンが弾いてるように見えるけど違うのかな?(後で調べたらやはりそうでした)

コーラスがすごい、だらけているようで、しっかりハモッている。コーラスグループなんだって実感する。きれいだ。

体が自然にのってくるのが分かる。なんか分からないがすごいエネルギーを感じて、涙が出てきた。泣いてるんじゃなく、涙が出てきた。

これも、あっという間に終わった。
フーッとため息。演奏中は息を吸っているばかりで、吐くことを忘れていた。
胸のあたりが苦しい。



次は、何が待ち受けているんだろう。

そろそろ、ドーンとヒット曲だろうな。ここまでは渋すぎる。雑誌「ミュージックライフ」の星加ルミコ編集長が予想してた演奏ナンバーとあまりにも違っている。
僕の一番好きな「HELP」をやってくれないと・・・・

イントロが・・・・ん?なんとなんと「BABY’S IN BLACK」ではないか!
ビートルズ65(当時はこのタイトル。FOR SALEですね)に入ってるやつだけど、
あんまり好かれてる曲じゃないぞ。

僕は、ビートルズには珍しく3拍子だし、なんかのんびりとしたいい曲だとは思っていたが、コンサートでやるなんて!

でも、途中のギターソロでジョンがなんか踊ってる。ワルツかぁ!おふざけがイカシてる。かっこいい。

それにしてもギターはいい音だ。なんていう名前のギターかなあ。・・・ギブソン?ジョージはアームがついててジョンはついてない。
ポールってコーラスが自然だ。ムリしてないって感じだ。ジョンとの息はぴったりだ。

これまたあっという間に終わった。


さて、盛り上がってきた・・・・かな?
やっぱりヒット曲やんないからちょっと会場が静かになってきたぞ。


つぎは?

なんかここらで一発決めてくんなきゃな〜。さすがに、初期の曲はやらないつもりなんだろうか。

ん?ジョージがしゃべったのか?しまった!見逃した!
今までの曲目をメモしていたミュージックライフ増刊号のページを見てたら、見逃した。

でも、「・・・・ファイン!」て聞こえた。

「I FEEL FINE」だ。2番目に好きな曲だぞ!
ヒット曲だ。あのイントロどうやって出すんだろう、と思っているうちに、
フィードバックのイントロ!・・・・?ちょっと違うぞ。

なんか違うけど、ビョ〜ンてジョンが弾いてる。続けてリフは?
ジョンだ、ジョンが弾いてる(実はこの時までイントロのリフはジョージだと思っていた)

おお!ああやって弾いてるのか。間違ってコピーしてた。
かっこいい、かっこいい。ジョンかっこいい。

歌はだらだら歌ってるし、歌詞も間違えた?ジョン苦笑い?
気にしない、気にしない。コーラスかっこいいし。

ジョージのソロはきちっと弾いてる。真面目なんだなジョージって。ソロが終わって、またジョンのリフ。

リンゴのドラムはレコードよりずっと迫力があって、いい音だ。今振り返れば、返しのモニターもないし、ホント天才だ。
ビートルズってリンゴでもってるといっても良いかもしれない。

エンディングはレコードはフェイドアウトだけどどうするの?

2〜3回繰り返してジャ〜ンと終わった。

やってくれたぜ。最高!静かになってた会場が盛り返してきたぞ。

このとき以来、この曲が我がバンドの十八番になった。

次はヒット曲続けて行っちゃえ!
今、気がついたんだけど、なんだか電気オルガン(こういう言い方しかなかったのです)が置いてあるけど、誰が何の曲で弾くんだろう。
映画ヘルプでジョンが弾いてるのを見たけど、どうするんだろう。興味深いぞ。



こんどこそジョージが何か言ってる。今ビートルズの生声を聴いてるんだな・・・・あらためて興奮してきた。
おっと聞き逃しちゃいけない・・・・なんだって?

「・・・・・・イエスタデイ!」なになにい!

やるんだあ!弦楽四重奏は?

すぐイントロが始まった。
ポールが歌いだす。なんとリンゴがドラムたたいてる。レコードではドラムなんか入ってないじゃないか。

でも、いい感じ。ジョージが弦楽器のパートをうまく弾いてる。うんうん、勉強になる。チェロの雰囲気・・・・

ポールはベースを軽い感じで指で弾いてる。

でも、また観客が静かになっちゃった。というか、うっとりしてるのかな。みんな声を張り上げる元気もないぐらい、この段階でへとへとだ。

「・・・・・IN YESTERDAY」
  で終わった。

レコード通りじゃないけれど、聞き惚れた。
後世カバーがいっぱいあるけど、本物が一番。自分のバンドでもやったけど(このアレンジで)ダメだ。
この曲は彼ら以外やっちゃいけないと思う。



いったい全部で何曲やるんだろう。星加ルミコさんは10曲位だって言ってた。とすると今7曲終わったから、あと3曲か。

曲紹介のしゃべりは、ジョンが一番ふざけてて、ポールがはりきってて、ジョージがまじめにやってる。

そして気になったんだが、「THE NEXT SONG IS WE LIKE TO DO・・・・・・・・」って決まり文句みたいに言う。特にジョージが。かっこいい。この言い方使おう。


ポールが「・・・・・・リンゴォ!」と叫んだ。

リンゴの曲だ・・・「I WANNA BE YOUR MAN」だぞ。最新の「WHAT GOES ON」じゃないんだ。当時リンゴが好きだったのですごくうれしかった。

古い曲だけど、ぐいぐい押してくる感じは、ロックそのものだ。
リンゴは意外とシャウトしてる。掛け合いのコーラスもポールがノリノリだ。演奏はまとまっててウネリがすごい。
大きな波が押し寄せてくる。この場にいた人しか感じない波だ。
おぼれそう。息ができない・・・

瞬く間に波がひいた。曲が終わったのだ。

一曲聴くのにこんなに疲れるなんて、思ってもいなかった。



当日のバタさんの曲順のメモ。


ジョン・ポール・ジョージがすっとマイクに寄った・・・

いきなり、「♪ヒーザーリール・ノーウエアーマーン・・・」のコーラス!

「NOWHERE MAN」じゃないかぁ!

これも最新アルバムのラバーソウルからだぞ。

ハモッてる、ハモッてる。きれいなコーラスに、全身鳥肌がたった。
電気のショックのようだ。この前叔父さんにやってもらった電気治療器のショックのようだ。ビリビリきた。
そして、やはり涙が出てきた。泣いてるんじゃないけど。なんで出てくるんだろう。

3人ともかる〜い感じで歌ってる。力んで力をこめてじゃない。フワーッとした感じだ。こういう風に歌いたい。

ギターのソロもいい音だ。レコードのギンギンした音とは違うけど・・・最後の「ピーン」はなんか良くわからないところで出したぞ。12フレットのハーモニックスじゃない。

(あとでわかったことだが、 きりつめてショートバージョンにしてた。なぜかはわからない)

ポールが高音に登りつめ、ジャーン・・・・もう、これは、神の音楽としか思えない。この世のものではない感じだ。
でも、彼らはそこにいる。目の前に。手を伸ばせば触れそうなところに。
神がまい降りている。そんな気になってしまった。
ちょっとおかしくなりそうだ。

もう、何がなんだか分からなくなってきた。

やっぱりビートルズが起こした巨大な波で溺れたのかもしれない。
(たしかに、現在でも60年代に彼らが起こした波はまだまだ世界中でうねっている。)



誰かが曲を紹介した。『誰か』と言ったのは、頭がモウロウとしてきて、目の前に彼らがいるにもかかわらず、ほとんど見えないし、聴こえないから。


でも、演奏は聴かなきゃ。腹に力を入れて聴こう。

ポールが歌い出す。
「♪ぺーパ バーク ラーイター…」

「PAPER BACK WRITER」だ。
こんな新しい曲をやるなんて全く想像もしてなかった。

ポールの後を追いかけて、ジョンがコーラス、ジョージもすぐ追いかけ、コーラス。
あの裏声はジョージだったんだ。レコードよりずっと荒い感じだが、我々には真似出来ない。
(本物を聴いてしまったせいなのか、私はご多分に漏れず、長年コピーバンドをやってきたが、いつも必ず、心の中で、むなしくなる。これは物真似芸だ。彼らのような波は起こせない、もうやめよう、って。とはいいつつ続けてしまう・・・・)

ジョージのギターのリフ、なんてパワフルなんだろう。
リンゴのドラムがまたまたパワフル。
ポールのベースはうねる、うねる。
ジョンのサイドギター、すごい。波を起こしてる中心は彼だ。

(いまだにジョンを超えるギタリストはいないと思う。クラプトンだって巧いかもしれないが、バンドのグルーヴを生み出すことは出来ない。今コピーバンドでジョン担当の方達はそこのところ理解してください)

途中のバックコーラスは時々ジョンが入り損なったりして、ジョンは苦笑いか?
なんか楽にやってるなあ。自分達の曲だもんなあ。

おっと、フェイドアウトの部分すごく短く終わってしまった。


この曲は自分のバンドじゃ出来ない。無理だ、と思った。

ここまで10曲。あっという間だ。
あと何曲なんだろう。



それにしても、あそこに置いてあるオルガンは使わないなあ。でも、たぶん、ジョンが弾くんだろうけど、何の曲で使うのか分からない。

ここまで、「ヤァ!ヤァ!ヤァ!」以前のヒット曲をやっていない。なぜなんだ、みんな聴きたがってるのに。
ちょっと期待はずれでもあるが、逆に意外性があって、ある意味緊張感がある選曲だ。

でも、彼らが日本のファンのために選んだんだから(後で分かったことだが、違ったみたい)仕方がないか。



と考える間もなく、ポールがしゃべり始めた。さっきからポールは、「ドーモ、ドーモ・・・」て言ってるけど、日本語なのかなあ。「どうも」なのかな?

なんか、腕時計を見るしぐさをしているけれど、終わりってことじゃないだろうな。

最後の曲だとしたら「のっぽのサリー」かな。

いきなり、ポールのシャウトだ!・・・・・

「I’M DOWN」!!!!!!!

ううう・・・・・・言葉が出ない。・・・・・・・本当にアイム・ダウンしてしまった。
なんて、美しい・神々しいシャウトだ。ジョンがシャウトしてくれなかった分、ポールのシャウトが聴けた。

追っかけのコーラスも楽しそうにやっているけど、音は、跳ねてる。なんか分からないけど、跳ねた音が僕の体を突き抜ける。言葉で言い尽くせない、パワーだ。

ダウンする、ダウンする・・・・

(この後、いろんな外国のミュージシャンのライブを体験したけど、この演奏に勝るものは聴いたことがない)

ドーン!っていう感じで、この曲は終わった。
途中のジョージのソロも、ソロとして聴こえたんではなく、得体の知れない大きな塊(ビートルズ)の一部として存在している、といったらいいのか。いい表現が見当たらない。
コピーバンドのジョージ担当の人はここのところが鍵です)


終わったとたん、全員、手を振り、ジャックを抜き、そして、
風のごとく、ステージから退いてしまった。


アンコールとかってあるのかな・・・・・



すぐ、司会のE.H.エリックが出てきて「これで、ビートルズの演奏会は終わりです。ありがとうございました。また会いましょう。」みたいなこと言って、さがってしまった。


・・・・・・・おしまい?・・・・終わったの?



もう、出てこないのか?


会場が明るくなっても誰も席を立たない。いや、立てない。
腰が抜けたのはこのときが初めてだった。


みんな泣いていた。でも、僕は途中で涙は出たけど、泣かなかった。つい、今しがたまで彼らがいたステージをくいいるように、見つめた。
死ぬまで忘れないように、頭に焼き付けておこう。涙でぼけないように、しっかりと。

歴史を目の当たりに見た人間としての緊張感から全身震えている。



この日から確実に自分が変わった。



・・・・・・・・・・武道館体験記終了・・・・